笑えてくるほどの夢見るダメ男役の林遣都を見るなら【鍵のない夢を見る】

鍵のない夢を見る 全5話

鍵のない夢を見る
連続ドラマW「鍵のない夢を見る」|WOWOWオンラインより

 

全5話「経験したことのない、身に覚えのある」オムニバスストーリー

原作読みました。ドラマ見ました。ドラマの「経験したことのない、身に覚えのある話。」というコピーは秀逸。それなりの年齢の女性であれば「ああ、自分はそこまで経験していないけどわかる気がする。これに近い人いる。一歩間違えば自分かもしれない」という身近さを感じる5作品です。逆に若い女性や男性はわかるのかな、と思ってしまう感覚でもあります。

辻村深月は「冷たい校舎の時は止まる」を読んで以来、ニガテでしたがこれはスッと読めました。主人公の年齢が20代から30代が設定されているからでしょうか。

 

「人生設計が階段階段って感じで踊り場がなかったのかもしれないね。」

最終夜「君本家の誘拐」(原作でも第5章)が一番複雑に見ました。子育てしながら働いたことがあれば、どちらの立場も「うんうんわかるー」「でもこっちもわかるー」というのではないかな。

見出しの「踊り場がなかったのかもしれないね」とは、高校時代の友人である理彩(原田夏希)が、君本良枝(広末涼子)に言うことば。友人グループのひとりの披露宴、直前に「普通、男性のほうが子作りに消極的なんじゃないの」と語気を荒げ、いきなり泣きじゃくる良枝(まあめんどくせー女なんですけど)を落ち着かせようと、理彩が

「いつも先に進む感じで、遊び部分になる踊り場がない気がする。もう少し今を楽しむのも悪くないと思う。このままだとまた階段を上ることしか考えられなくなっちゃうよ。子どもが生まれたから、次はマイホーム!って感じ」

と続けます。良枝は「家についてはずいぶん前から考えている」と答え、かみ合ってないことに気づいていない態度を見て、理彩は説得をあきらめます。基本的な考え方としてはわたしも理彩寄りですが、「人生設計があって、計画通りに生きてくのがいけないのか」のように反発した考え方する女性の気持ちもわからなくもない。

 

この二人のシーンはもうひとつ。子どもが生まれ、ワンオペ育児で鬱々としている良枝の家に、理彩が遊びに来る。ここでも見事にかみ合いません。披露宴の時のことを持ち出し「心配かけてごめんねって謝るかと思ったのに謝らないんだね。子どももすぐにできたのに」という理彩に対し、「あれから2ヶ月もあとのことだから、すぐってわけではない」と言い張る良枝。

うんわかる、授かりたい・計画的にと思っている時の二ヶ月って長いし、6~7週では心拍見えず9~10週まで待つ期間も長いし、不安なのはわかる。だがしかし、自分の想い・都合のことばかりの印象です。

「仕事は?いつごろ復帰するの」「はやくて3年後。育児休暇が3年取れる。だからちょうど3年後に二人目を作れば合わせて6年休めるでしょ。」「6年って…そのあとに復帰は無理だよね。6年も仕事から離れてたらその間にいろいろと変わって、ついて行けなくなるんじゃない」「どして?でも、後々のこと考えたら、旦那の稼ぎだけじゃ辛くなるだろうし。うちの会社では規則で認められてるの。」

理彩は「いい…会社だね…」と。あきらめて、軽く嫌味を言ったつもりなのでしょうが、それすらも良枝は気づかない。視野の狭い、育児で視野の狭くなった女が哀れで可哀そうとまで思ってしまいます。

 

実母からは「(育児は) みんなやってきたことなんだから、大丈夫よ」と言われる。これってある意味、呪いのことばですよね、良枝は折に触れ思い出して「そうだ、みんな、こうして苦労しているんだ」と自分に言い聞かせちゃう。

また夜泣きをしても妻まかせの夫・学(岡田義徳)は、外面はいいんです。良枝の母親には「良枝をよろしくお願いします」とか、家だって娘の名前だって、妻の希望する通りにしています。一見、理解のある夫ですが「おまえの言う通りにしただろう」とヒト任せであり、家庭・妊娠・育児は他人事に見えます。

「生まれたら連絡ください。お祝いしに行きますから」と言われていた会社の同僚にはメールアドレスを変えられ連絡がつかず。

良枝にはいらっとする点もあるけど、こうした同情すべき点があって、もう客観的に見たら、ギャーーって感じ。なのに、自分はこうしたい、自分はこうなりたいって散々言ってきた手前、言った通りになっている手前、なかなかブチまけることができない。

自分でもたぶん「思い通りに進んでいるのに、なんかおかしい。」って気づきはじめているけど、渦中にいてどうすればいいかわからない。「公園デビューは1歳すぎてから」「スーパーのレジ袋を擦り合わせると赤ちゃんが泣きやむ」等の育児書・育児雑誌しか拠り所がなく、気の毒で目が離せない。

そしてそして「思い込み激しい自己チュー女、ザマア」っていうスカッと感!……を感じるのは、わたしが意地悪なのかしら。

 

デザイン工学科の彼の夢は、医学部に転入して、サッカー日本代表。

広末を長々語ったので、サクッと第1夜「芹葉大学の夢と殺人」(原作では第4章)のことを。芹葉大学工学部デザイン工学科の同じ研究室で出会う、二木未玖(倉科カナ)と、羽根木雄大(林遣都)。

「一度夢をかなえた人って、これから何をするにしても明確なヴィジョンを持てるわけじゃない?そういう人の話し聞いてみたかった。俺も夢があるから。……俺さ、二木さんは他の人とは違うって思ってたよ、お互い高め合うことができるって」と付き合い始める。

鍵のない夢を見る第1夜 鍵のない夢を見る第1夜
連続ドラマW「鍵のない夢を見る」|WOWOWオンラインより


いやあ、この羽根木雄大はぶっ飛んでて、違和感しかない勘違い野郎なんです。

久しぶりに絵本を描いたから見てという未玖に、雄大は「ウチに置いておけば見るかもしれない。前一度見た時、未玖の文章に稚拙な感じを受けて、最後まで読み進められなかったんだよね」とシレッと言う。

医学部も受からない上、工学部を卒業できず留年する雄大。ゲームをする雄大を未玖が咎めると「俺の時間だから、どう使おうと俺の勝手だ。ゲームだって大事な気分転換の時間として、ちゃんと割り振ってあるんだ。昼間どれだけ俺が勉強してるか知らないで、人の時間に勝手に割り込んでくるな」とか。

挙句「姉に言われたから別れよう。でも友だちでいよう。フッてごめんね」と電話で言ってくる。なんなら、小説だとドラマでは描ききれない(いやだいぶ際どいシーンもありましたけど)、性癖的な部分でのダメっぷりもあります。逆に「これまで雄大に使ったお金は、53万9824円」というセリフはドラマオリジナル。

もうねダメ男っぷりが際立っていて笑える、そういうドラマです。(違うか)


二木未玖の実家「二木写真館」は浦和の鈴木写真館です。

 

 

 

【評】★★★☆☆ huluで見れます。